給与・社会保険:社会保険加入対策
- 働き方改革2020.05.21
今回から「建設業働き方改革加速化プログラム」に関連する
「社会保険加入対策」について取り上げます。
まずは、これまで進められてきた対策と現状を見ていきたいと思います。
建設業では、平成24年から社会保険未加入問題への対策を進めており、
国土交通省は『実施後5年(平成29年度)を目処に、企業単位の許可業者加入率100%、
労働者単位では製造業相当の加入状況を目指すこと』
を目標としていました。
平成24年10月時点での企業単位での加入率は
雇用保険95%、健康保険89%、厚生金89%、
元請・下請次数別での加入率は、
元請96.6% 1次下請88.2% 2次下請76.6% 3次下請74.7%。
業界全体として加入率が低いと共に、下請企業の加入割合が特に低いことが指摘されていました。
そのため加入対策として、
・経営事項審査において、社会保険に未加入の場合の減点幅を拡大する
・建設業許可更新時に社会保険加入状況の確認・指導する
・国土交通省直轄工事おいて、元請企業及び一次下請企業を社会保険加入企業に限定する
・地方向上団体発注工事において、未加入業者の排除する
などが行われてきました。
下請企業の社会保険加入については、
平成24年11月「社会保険の加入に関する下請け指導ガイドライン」が施行され、
「元請企業において保険未加入の協力会社とは契約しないこと」
「遅くとも平成29年度以降においては、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、
元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱とすべきである」
などの改正を重ね、下請企業の社会保険加入対策を強化してきました。
また、下請企業が法定福利費(法令に基づき企業が義務的に負担しなければならない社会保険料)を
確保できるよう、下請企業から元請企業へ、法定福利費の内訳明示した「標準見積書」を提出する取り組みが
平成25年9月から開始されています。
これらの対策の結果、
平成29年10月時点の企業単位での加入率が、
雇用保険98%、健康保険98%、厚生金97%となり
目標には届きませんでしたが、加入率は上昇してきました。
そして、令和元年10月時点の企業単位での加入率では
雇用保険99%、健康保険99%、厚生年金99%となっています。
(※加入率のデータは公共事業労務費調査より)
下請企業の加入率も
令和元年10月 元請99.6% 1次下請98.9% 2次下請97.2% 3次下請93.6%
と上昇してきましたが、元請企業と比較すると加入率が低い傾向は続いています。
「建設業働き方改革加速化プログラム」では、
「社会保険に未加入の建設企業は、建設業の許可・更新を認めない仕組みを構築する」としています。
これについては、法改正により、建設業許可要件が見直され
令和2年10月より社会保険が許可要件となる予定です。
今後は、社会保険に加入していないと建設業許可を受けることが出来なくなります。
建設業では、社会保険の加入が必須である状況になりつつあるようです。
社会保険の加入について、給与計算センターでもご相談を受け付けております。
どの社会保険に加入してよいかわからない、
保険料がどのくらいかかるのだろう、
社会保険に加入したがらない労働者はどうしたらよいか
など、どんな質問でも構いませんので、お気軽にご相談ください。
社会保険労務士 松田
参考資料
国土交通省:建設業における社会保険加入対策について
国土交通省:社会保険の加入及び賃金の状況等に関する調査
建設業社会保険推進・処遇改善連絡協議会:第3回資料