所得税と社会保険の「扶養の範囲」
- 給与計算2020.07.29
パートやアルバイトを雇用している会社では、
夏頃から「扶養の範囲」を超えないよう、勤務日数を調整される方がいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、所得税と社会保険の「扶養の範囲」について、まとめたいと思います。
まず、よく耳にする〇〇円の壁は下記の通りです。(※扶養の範囲で働く配偶者を妻とします。)
給与収入103万円…妻の給与に所得税が発生しない範囲です。
給与収入130万円…夫の加入する社会保険の被扶養者となる範囲です。
これを超えると妻自身で健康保険料・年金保険料を負担する必要があります。
給与収入150万円…夫の所得税を計算する際に、配偶者控除または配偶者特別控除として、控除額38万円となる範囲です。
〇所得税の扶養の範囲
・配偶者控除は、妻の給与収入103万円以下、夫の給与収入が1,120万円以下の場合は38万円です。
(夫の収入1,120万円超1,170万円以下で26万円、1,170万円超1,220万円以下で13万円)
・配偶者特別控除は、妻の給与収入103万円超150万円以下、夫の給与収入が1,120万円以下の場合は38万円です。
なお、妻の給与収入が150万円超であっても、201万5999円以下であれば、
配偶者特別控除の対象となり、夫の給与収入に応じて、段階的に控除額が決定します。
・住民税については、市区町村により異なりますが、おおよそ100万円前後を超えると発生します。
〇社会保険の扶養の範囲
・所得税と異なり、年間収入は過去の金額ではなく、未来に向かっての収入金額で判断します。
そのため、契約変更などにより1カ月の給与アップし、その状態が今後も続くことが見込まれる場合は、扶養の対象外となります。
・給与収入には非課税の通勤手当なども含めるため、基本給の金額のみで判断していると130万円を超えてしまうことがあります。
・失業給付、出産手当金、傷病手当金を受給している間は、受給額によって扶養の対象外となる場合があります。
・給与収入130万円未満であっても、勤務先の企業の厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の場合や、
国・地方公共団体などの場合は、給与月額が8.8万円以上である等の要件を満たすと、勤務先の社会保険に加入する必要があります。
扶養の対象者として正しいかどうか、所得税・社会保険ともに、夫の会社へ調査が行われます。
所得税については、税務署から「扶養控除等の見直しについて」の書類が届くことがあり、
書類が届いた会社は、見直し対象者の扶養家族の収入を確認し、再度、年末調整計算を行い、税務署に報告する必要があります。
また、社会保険については、毎年、健康保険の被扶養者調査が行われており、収入状況を確認し報告します。
会社への調査の際、時々見かけるのが、妻のパートについては十分に注意していたが、
学生である子供のアルバイト収入が扶養の範囲を超えていたという場合です。
(子供の場合も、所得税の扶養の範囲は給与収入103万円以下、社会保険の扶養の範囲は給与収入130万円以下)
配偶者だけでなく扶養する家族については、収入が扶養の範囲内であるかどうか、十分に注意が必要です。
社会保険労務士 松田