給与・社会保険:「建設キャリアアップシステム」「能力評価制度」
- 働き方改革2020.05.14
今回から「建設業働き方改革加速化プログラム」の
2つ目の分野「給与・社会保険」について取り上げたいと思います。
「給与・社会保険」の分野では
「技術と経験にふさわしい処遇(給与)と社会保険加入の徹底に向けた環境の整備」
を目的としています。
まずは、「技術や経験にふさわしい処遇(給与)の実現」に関する施策の中で、
「建設キャリアアップシステム」と「能力評価制度」を確認したいと思います。
「建設キャリアアップシステム」
「建設キャリアアップシステム」とは、
技術者の就業履歴や保有資格を蓄積することで、
処遇の改善や技能の研鑽を図ることを目指すシステムです。
建設業の職場環境は
・様々な事業者の現場で経験を積んでいくため、能力が統一的に評価されにくい
・現場管理や後進の指導など、一定の経験を積んだ技能者が果たしている役割や能力が処遇に反映されにくい
などの問題点が指摘されています。
そこで、業界統一のルールで、技術者の情報を蓄積することで、
技術や経験に応じた公平な評価や処遇、工事の品質向上、現場作業の効率化などに繋げようと、
2019年4月から運用が開始されました。
<システムの流れ>
1 事業者・技術者 情報等の登録
事業者情報(商号、所在地、建設許可情報等)、技能者情報(本人情報、保有資格、社会保険加入状況等)、
現場情報(現場名、工事の内容等)を登録する。
2 ICカードの交付・現場での読み取り
登録後、技術者にはICカードが交付される。
現場入場時に、カードリーダーなどで読み取りを行うと就業履歴がシステムに蓄積される。
3 技能者の能力評価
技能者の経験(就業日数等)、知識・技能(保有資格)、マネジメント労力がシステムに蓄積され、
レベルに応じたキャリアアップカードが配布される。(下記の「能力評価制度」に関連)
このシステムのメリットとして、下記のようなことが考えられています。
・事業者は、技能者の就業状況や社会保険加入状況等を簡単に確認できる、
現場の入場管理などの効率化が図れる など
・技能者は、自分の資格や就業履歴を証明できるため、現場に関わらず、適正な評価と処遇が受けられる、
建設業を一旦離れ再入職する際も、離職以前の資格や経験を証明できる など
2020年4月末時点の登録状況は、技能者数241,260人、事業者数46,789者です。
国土交通省の初年度の登録目標(100万人)には届いていませんが、
5年間で全ての技能者の登録を目指しています。
また2020年1月より外国人技術実習生の受け入れの際は、
建設キャリアアップシステムへ登録が義務になりました。
「能力評価制度」
「建設キャリアアップシステム」に登録された保有資格や現場の就業履歴などを活用し、
各技術者の経験や、知識・技能、マネジメント能力を正しく評価するためのものです。
職種ごとに定められた評価基準をもとに、
レベル1〜4(初級技術者・中堅技術者・職長・高度なマネジメント能力を有する者)の評価判定を行います。
<能力評価制度の流れ>
1 事業者・技術者が「建設キャリアアップシステム」に情報を登録する
2 所属事業者がWEB上の「レベル判定システム」に能力評価の申請を行う
(申請時には技術者のレベルを指定して申請を行う)
3 能力評価の判定結果、レベルに応じた色のキャリアアップカードが技術者に配布される
能力評価のメリットは、下記のように考えられます。
・技術者は、自らのレベルを見える化でき、レベルに応じて立場や賃金が上昇することでモチベーションに繋がる など
・事業者は、レベルの高い技術者を雇用することで、経営事項審査の高評価を得ることができる など
「建設キャリアアップシステム」と「能力評価制度」は、
すぐに効果が現れるものではないため、登録や申請作業などを、手間に感じるかもしれません。
しかし、これまで曖昧であった能力の評価や処遇が明確になることで、
若手の技術者の目指すべきキャリアが明確になり、人材の定着にも繋がると期待されています。
今後の職場環境の改善のためには、まずはこのシステムを活用するひと手間が必要なのかもしれません。
社会保険労務士 松田
参考資料
一般財団法人建設業振興基金:建設キャリアップシステム
国土交通省:建設キャリアアップシステム
建設分野における技能実習制度
建設技能者の能力評価制度について