賃金支払いの5原則
労働基準法では、賃金を支払う方法について5つの原則を規定しています。
- 通貨払い→小切手や商品券、自社製品、株券等で支払うことは認められていません。労働協約により通勤定期の現物支給、労使協定と個々の同意があれば銀行口座へ振込むことは問題ありません。
- 直接払い→賃金は労働者に直接支払わなければならず、本人以外、配偶者や代理人等に支払うことはできません。
- 全額払い→法令により税金や社会保険料を控除すること、労使協定により組合費や社宅料、社内預金等を控除することは可能です。
- 毎月一回以上払い→年俸制であっても毎月支払う必要があります。
- 一定期日払い→金融機関の休日等により数日繰り上げ又は繰り下げることは差し支えありません。
所定外労働時間と法定外労働時間
所定外労働とは、会社で定めている通常の労働日の労働時間以外の労働を言います。労働基準法で定めている法定労働時間は、原則1日8時間、1週40時間が上限です。
例えば、1日の所定労働時間が7時間の会社で1日8時間労働した場合、8-7時間=1時間の残業をしていますが、
この1時間の残業時間分については1日8時間の法定労働時間内に収まっているので(法定時間内労働)、割増賃金の支払いは不要となります。
1日9時間労働した場合は、9-7時間=2時間の残業となりますが、このうち1時間は法定内労働時間で割増賃金の支払いは不要、
残りの1時間については1日8時間を超えた法定外労働時間となりますので、25%の割増賃金の支払いが必要となります。
法定外労働や休日労働をさせるには、労使間で時間外労働、休日労働に関する協定(36協定)を結ぶ必要があります。
36協定の届け出があっても、労働時間を無制限に延長できるわけではなく、時間外労働の限度時間の基準の範囲内(時間外労働の上限 1ヶ月45時間、1年360時間)に収める必要があります。
割増賃金とは
1日8時間または1週40時間を超えた分については25%以上(猶予中の中小企業以外は1ヶ月60時間を超えた分は50%)、
1週につき1日(または4週を通じて4日)の法定休日に労働した場合は35%の割増賃金が必要になります。
この他、深夜(午後10時~午前5時)に労働した場合は25%以上が必要です。
割増賃金の計算は、通常の労働時間の賃金=(基本給+諸手当)÷1ヶ月の平均所定労働時間数を基礎とします。
諸手当には、労働との直接の関係が薄い
①家族手当②通勤手当③別居手当④子女教育手当⑤住宅手当⑥臨時に支払われた賃金⑦1ヶ月を超える期間ごとに支払われた賃金(賞与等)は算入しません。
・所定外法定内労働時間→割増不要
・法定時間外労働→25%以上
※1ヶ月60時間を超えた分は50%(中小企業は猶予中)
・深夜→25%以上
・時間外かつ深夜労働→50%以上(25%+25%)
※1ヶ月60時間を超えた分は75%(50%+25%)(中小企業は猶予中)
・休日労働→35%以上
・休日かつ深夜労働→60%以上(35%+25%)
※当面の間猶予される中小企業とは
小売業 資本金5,000万円以下または常時使用する従業員数50人以下
サービス業 5,000万円以下または100人以下
卸売業 1億円以下または100人以下
その他の業種 3億円以下または300人以下
振替休日と代休
振替休日とは、休日に出勤してもらう必要がある場合に、その日の代わりにあらかじめ休日を指定することで、休日と労働日を交換するものです。
交換することで、本来の休日を労働日、本来の労働日を休日として扱います。
休日の振替を行うには、就業規則に振替休日ができる旨を規定しておくことが必要です。
振替実施日の少なくとも前日までに会社から振替日(原則として同一週内で出来る限り近い日)を労働者に通知します。
振替日が同一週内の場合は、休日に出勤した日は通常の賃金を支払えばよいことになります。
同一週内に振替日を指定できない場合で、その週の労働時間が法定労働時間を超える場合は、時間外労働として割増賃金の支払いが必要になります。
一方で代休は、休日労働を行わせた後で、特定のある日を休日にするものです。
この場合は休日出勤をしたということになりますので、その日は休日労働として割増賃金の支いが必要となります(代休日に賃金を支払う必要はありません)。